エンディング

小林 廻
ここまで間宮家の皆さんの未来を見てきましたが、そろそろ話を事件に戻しましょう。ボクたちは議論を重ねて、犯人と思しき人物を拘束(こうそく)して、警察に突き出しましたが、その後、どうなったのでしょうか。残念ながら、事件は迷宮入(めいきゅうい)りとなりました。警察の懸命(けんめい)な捜査の結果、犯人は特定できず、誰も逮捕されることがなかったのです。ボクたちは解放され、皆さん、それぞれの帰る場所へと帰ってきました。

巡流 ループ
ふう、久々の事務所だね、小林クン。しかし、それにしても奇妙だヨ。間宮泰三サンがお亡くなりになられてから、ワタクシ、何度も彼の命を救いたいと念じているのだが、いっこうに時間遡行能力が発動しないんだ。いったい、どうしてしまったのだろうネ。

小林 廻
先生。それは、ボクが、懐中時計の龍頭(りゅうず)を押していないからです。

巡流 ループ
んん? どういうことかネ?

小林 廻
ずっと騙していてごめんなさい。先生には、真実をお伝えします。間宮泰三さんを殺した犯人、それは、ボクなんです。

巡流 ループ
小林クン……!?

小林 廻
先生は時間遡行能力のことを、ご自身に備(そな)わった超自然的(ちょうしぜんてき)な現象であると思っていたみたいですけれど、ほんとうは違うんです。あれは、ボクの父である、予知夢探偵が遺(のこ)した、魔法の道具によってもたらされるんです。あの日、ボクと先生は、身辺警護の依頼を受けて、間宮邸を訪ねました。そして、そこでボクは知ったんです。泰三と高泉がボクの父親の仇(かたき)であることを。でも、そのことを知ったとき、泰三は、既に春燕(チュンヤン)によって殺されていました。ボクは誰かの手を借りることなく、ボク自身の手によって復讐を果たすために、時間遡行能力を使い、2ループ目の今回、泰三をこの手に掛けたんです。

巡流 ループ
そういう……ことだったのか……。

小林 廻
先生、ボクはもう行きます。今まで、ありがとうございました。

巡流 ループ
待ちたまえ、小林クン!

小林 廻
なんです?

巡流 ループ
キミには隠していたが、時間遡行能力のことを、ずっと憂鬱(ゆううつ)に感じていたんだ。時間遡行能力を使うことで、たしかに被害者は救うことができる。しかし、では、救われなかった世界は、どうなってしまうのだろう。能力が使われるたび、並行世界(パラレルワールド)が増えていくことになる。時間を遡(さかのぼ)ることができるのは、けして人間がやっていいことじゃない、それは、もはや神の領分(りょうぶん)と言ってもいい。

小林 廻
そんなこと悩んでいたんですか。先生らしいですね。

巡流 ループ
ああ。しかし、時間遡行能力がキミのものであった以上、この憂鬱もキミのものだったんだね。

小林 廻
ボクは無神経(むしんけい)だから、ボクが選ばなかった世界のことなんて、気にもしなかったですよ。ボクはただ、復讐したかっただけなんですから。それに、泰三が死の間際(まぎわ)、腕を振り回したときに、懐中時計は壊れてしまい、神秘(しんぴ)は失われてしまいました。

巡流 ループ
小林クン。警察に出頭(しゅっとう)するのだ。復讐による殺人は、法律で許されていない。キミは自首(じしゅ)し、罪を償(つぐな)うのだ。

エンディングM
小林 廻
先生のことは、今まで騙していて、後ろめたく感じていましたからね。いいですよ、ボクの復讐は、もう果たされています。自首します。

巡流 ループ
勘違いするな、小林クン。自棄(やけ)になるな?

小林 廻
自棄(やけ)? どういう意味です??

巡流 ループ
待っている、ということだ。

小林 廻
待って、いる……?

巡流 ループ
キミが罪を償(つぐな)い、また、ここに戻ってくることを待っている、そう言っているんだ。

小林 廻
なにを馬鹿なことを……もう時間遡行能力は、使えないんですよ?

巡流 ループ
フフフ。それは、好都合(こうつごう)なことだ、小林クン。何故なら、時間遡行能力がなければ、もうワタクシは憂鬱を感じなくて済むのだからネ。

小林 廻
ぷっ。

巡流 ループ
ふう、ようやく笑ってくれたね、小林クン。

小林 廻
いいですよ、分かりました。じゃあ、さようなら……ではなくて、いってきます、ですね。先生

巡流 ループ
ああ、いってらっしゃい。待っているよ。

エンディングN
ナレーション
小林廻さん。あなたは巡流さんの指示通り、警察に出頭し、間宮泰三さんを殺したことを素直に告白しました。あなたは有罪判決を受け、少年院に入れられることになります。
高泉さん。あなたは小林さんが泰三殺しの犯人として逮捕されたことを、風の便りに聞き、小林さんに会うため少年院に面会に行きます。そして、そこで自分の罪を正直に告白すると、小林さんはあなたを許すことを告げました。少年院を出たあなたの中には、いつしか予知夢探偵殺しの犯人として自首しようという考えが宿っていました。あなたは残された人生、罪を償って生きていくことを決めたのです。
そして、巡流ループさん。小林さんが、あなたの元を去った後も、あなたは私立探偵を続けることにしました。数年後、あなたの事務所を、刑期を終えた小林さんが訪れます。その後、ふたりは2人組の私立探偵として活躍していくのでした。【完】
エンディングO
ナレーション
小林廻さん。あなたは巡流さんの指示通り、警察に出頭し、間宮泰三さんを殺したことを素直に告白しました。あなたは有罪判決を受け、少年院に入れられることになります。
そして、巡流ループさん。小林さんが、あなたの元を去った後も、あなたは私立探偵を続けることにしました。数年後、あなたの事務所を、刑期を終えた小林クンが訪れます。その後、ふたりは2人組の私立探偵として活躍していくのでした。【完】
エンディングP
小林 廻
先生のことは、今まで騙していて、後ろめたく感じていましたからね。でも、自首はできません。

巡流 ループ
何故だ?

小林 廻
やっぱり、高泉のことが許せないからです。まだ、ボクの復讐は終わってないんですよ……だから、さよならです、先生。

ナレーション
巡流ループさん。あなたは絶対の信頼を置いていた小林さんに、必死に手を差し伸べましたが、残念ながら小林さんは、あなたの手を取りませんでした。しかし、あなたは私立探偵を続け、いつの日か小林さんが、あなたの元へ戻ってきてくれることを信じています。

エンディングQ
ナレーション
小林廻さん、そして高泉さん。その後、お二人は再会します。罪の意識に苛まれていた高泉さんは許しを請いますが、小林さんは許しを与えませんでした。高泉さんは、小林さんの手に掛かり、命を落としましたが、その死に顔はどこか安らかであったようにも見えます。そして復讐を終えた小林さんは、目的を失い、あてのない旅に出るのでした。【完】
エンディングR
ナレーション
小林廻さん。巡流さんの元を去ったあなたは、高泉さんの姿を求めて旅に出ますが、彼の行方は杳(よう)として知れず、やがてあなたの元に、彼の訃報が届きました。あなたの預かり知らぬところで、高泉さんはご自身の結末に辿り着いていたのです。目的を失ったあなたは、あてのない旅に出るのでした。【完】