エンディング

間宮 薫子
天国のお母さん……死ぬ直前に教えてくれたよね。私が産まれる前に、お父さんが死んだという話は嘘だったって。そして、もし、お父さんのことを知りたいなら、泰三さんに話を聞きなさいと教えてくれて、ありがとう。泰三さんに、直接お話はできなかったけれど、いろんなひとの話を聞いて分かったの。私のお父さんは、執事の高泉さんだったってこと。
警察が関係者のひとりひとりに話を聞いている今なら、チャンスがある。私、お父さんと話をしてみる……!

ナレーション
一方その頃、高泉さんは使用人控室で、ひとり考え事をしていました。

高泉 源次郎
1930年代……あの頃の大日本帝国は、財閥(ざいばつ)グループによって支配されており、間宮電器が生き残るには、わずかながらの不正は、致し方なかった。私は実行部隊として、何度も、この手を汚してきた。いずれ、司法(しほう)の手が及ぶかもしれない、そう考えると、妻子(さいし)に迷惑を掛けることは避けたかった。だから、縁を切ったというのに……今になって、産まれてから一度も会ったことのなかった娘に会ってしまうとは、な。
薫子……か。確かに、紫(ゆかり)によく似ている。しかし、今の私に、父親として彼女と会う資格はあるのか……?

ナレーション
果たして高泉は、薫子の呼びだしに応じるのか、はたまた応じないのか……。

エンディングF
間宮 薫子
高泉……さん?

高泉 源次郎
今さら父親として接(せっ)することはできません。泰三様の執事として、お話させてください。

間宮 薫子
そう、分かったわ。なら、ひとつだけ教えて。お母さんは、最期に教えてくれたの。お父さんを恨(うら)んでいないって。今でも愛してるって。あなたは……どうなの?

高泉 源次郎
……仕方がなかったのです。あの時代は、まさに弱肉強食。スキを見せたものから食われていったのです。そうならないためには、手を汚すしかなかったのです。今とはなっては、家族より会社を取った私に、あなたにもあなたのお母様にも、言うべき言葉はございません。

間宮 薫子
ありがとう。その言葉だけで充分よ。それじゃあ、さようなら。もう会うことは、ないでしょう。

ナレーション
薫子さん。あなたは、あなたのお父様が、あなたのお母様を愛していたがゆえに別れたのだということを言外に察しました。あまりに武骨な父親の愛を知ったあなたは、胸に掛かっていたモヤが晴れていくのを感じました。
そして、高泉さん。あなたは、泰三さんの死体を見た瞬間から、自分がなすべきことを考えていたはずです。今、あなたの心には、警察に自首をしようという考えが宿っています。あなたは、すべてを告白し、残された人生、罪を償って生きていくことを決めたのです。

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エンディングG
間宮 薫子
高泉……さん?

ナレーション
薫子さんは、高泉さんを食堂に呼び出していましたが、約束の時間、高泉さんの姿はありません。代わりにあったのは、一通の手紙です。

間宮 薫子
この手紙は……なにかしら?

高泉 源次郎
間宮薫子殿。かつての私は、間宮電器を成長させるため、手を汚す仕事をしておりました。とても人様に顔向けできる仕事ではございません。そして、今は、主(あるじ)を失った、ただの執事でございます。今も昔も、私は、あなたの父親などではありません。あなたの母親が、若(わか)かりし日に言ったことは、真実なのです。あなたの父親は、とうの昔に、死んだのでございます。

間宮 薫子
……はあ、どうしようもない生き物ね、男って。

ナレーション
薫子さん。あなたは、あなたのお父様が、あなたのお母様を愛していたがゆえに別れたのだということを行間に読み取りました。あまりに武骨な父親の愛を知ったあなたは、胸に掛かっていたモヤが晴れていくのを感じました。
そして、高泉さん。薫子さんと会うことを選ばなかった高泉さんは、今、どこにいるのでしょうか?

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エンディングI
高泉 源次郎
まったく、長いようで短い人生だった。もっとやるべきことが、あっただろうに、私は、どうしたってこんな生き方をしてしまったのだろうか。もっとも、孤独な男にとって、この孤独な終わり方は、これ以上はないくらいに、うってつけかもしれない。さあ、泰三さん、これからそっちに行くから、悪いけれど、また相手してもらいますよ。

ナレーション
高泉さん。あなたは邸内の一室で、ひとしれず自殺することを選びました。それは、きっとあなたなりのけじめの付け方だったのでしょう。別れた奥さんや娘さん、12年前に殺したある私立探偵のことを考えながら、あなたは自分の人生に、ご自身で幕を下ろされました。

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エンディングK
高泉 源次郎
1930年代……あの頃の大日本帝国は、財閥(ざいばつ)グループによって支配されており、間宮電器が生き残るには、わずかながらの不正は、致し方なかった。私は実行部隊として、何度も、この手を汚してきた。しかし、私の最大の過ちは12年前、あの男を、殺したことだろう。間宮電器が隠蔽(いんぺい)してきた様々な不祥事(ふしょうじ)を、すべて明るみに出そうとした、あの男……予知夢探偵。
今、この邸内(ていない)に、あの男の、子どもが来ている。私は……会わなくてはならないだろう。

ナレーション
果たして、高泉さんが、どのような結末を辿るのか、それは小林カイさんの手に委ねられています。

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